Learn About MALARIA

年間42万人以上が
命を落とす感染症、
マラリアとは

マラリアってどんな病気?

マラリアはマラリア原虫という寄生虫によって引き起こされる疾患で、マラリア原虫をもった蚊に刺されることで感染します。マラリア原虫を持っているメスのハマダラカ(羽斑蚊)が産卵のため人の体を刺して吸血する際、マラリア原虫が体内に侵入してマラリアに感染します。人にマラリアを引き起こす原虫は、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、サルマラリア原虫の5種類ですが、人間の命を最も脅かしているのが熱帯熱マラリア原虫と三日熱マラリア原虫です。アフリカ大陸で多くみられるのが熱帯熱マラリア原虫で、世界のマラリアに関連する死亡のほとんどがこの原虫によるものです。サハラ以南アフリカ以外の地域のほとんどの国では三日熱マラリア原虫によるものが主流となっています。

日本にもマラリアはあった

日本では古くからマラリアは「おこり(瘧)」と呼ばれて、日本史上も平清盛をはじめ、様々な人物がマラリアとみられる病気で亡くなっています。明治から昭和初期には、全国でマラリアが流行しました。明治期の北海道開拓のとき、多くの人の命を奪ったのはマラリアでした。本州では琵琶湖のある滋賀を中心に、福井、石川、愛知、富山で発生しましたが、福井では大正時代に毎年9000~2万2000人以上の患者が報告されました。戦後もアジアから帰国した元兵士の間でマラリアは流行しました。 また、第二次世界大戦時には、マラリア発生地域への強制疎開によって多くの住民がマラリアで命をおとし、「戦争マラリア」と呼ばれる痛ましい事態を引き起こしました。戦後マラリアは全国で流行しましたが、徹底した予防・対策をとることで、死者数は激減、1950年代にマラリアの流行は終息し、1963年の石垣島のマラリア終焉記念大会で日本国内でのマラリア制圧が宣言されることになります。現在は国内での感染による発生はありません。

マラリアを予防することは可能です

マラリアは予防も治療もできる疾患です。マラリアが感染するのを防ぐ主要な方法は、媒介する蚊の駆除ですが、そのためには殺虫剤処理(ITN。蚊が蚊帳に触れたらすぐに死ぬように殺虫剤を練り込んである)の蚊帳と屋内残効性殺虫剤噴霧(IRS)という2つの有効な手段があります。予防接種はまだありませんが、抗マラリア薬を予防に用いることができます。マラリア流行地へ渡航する際には抗マラリア薬の予防内服によって、血中でのマラリア感染を押さえ込むことで発症を予防します。また、感染が少なくない地域に住む妊婦に対して、妊娠で初めての検診の後、定期検診時に毎回予防内服を推奨しています。同様に、アフリカの感染伝播が激しい地域に住む乳幼児にも、定期の予防接種と並行し予防投与することを推奨しています。

マラリアによる死亡を
無くすことは可能です

マラリアの早期診断と治療は、疾患を減少させ、死亡を防ぎます。特に熱帯熱マラリアに有効な最も良い治療法は、アルテミシニン併用療法を基軸とする併用療法(ACT)です。WHOは、マラリアが疑われる症例には全て、治療薬投与の前に寄生虫学的検査(顕微鏡検査または迅速診断検査)を用いて確定診断することを推奨しています。寄生虫学的検査は30分以内に結果が得られます。発熱後24時間以内に適切な検査と薬の投与を受けることで、重症化と死亡を防ぐことができます。

耐性の課題

これまで媒介する蚊の駆除によりマラリア対策は成功してきましたが、ITNやLLINで使用が推奨されている唯一の殺虫剤であるピレスロイド剤に対し、近年、多くの国で耐性をもった蚊が出現してきました。蚊帳に2種類の異なる殺虫剤を使用することで、殺虫剤耐性が進んで拡散されるリスクを緩和できるので、このような新たな蚊帳の開発は優先事項です。IRSと蚊帳の両方において、いくつかの有望な製品が開発段階にあります。一方、抗マラリア剤への耐性の問題も繰り返し起こっています。多薬剤耐性をもつ熱帯熱マラリアにも効果的であるとされてきたアルテミシニンに耐性のある原虫が近年大メコン圏のカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの5か国で報告されています。このため、2014年9月にWHOのマラリア政策諮問委員会(MPAC)は、2030年までにこの地域から熱帯熱マラリアを排除するという目標を採択することを勧告しまし、翌年5月に大メコン圏でのマラリア排除戦略(2015年~2030年)が開始されました。

ゼロマラリアを目指す

©︎UCSF: Shrinking the Malaria Map

未だにマラリアで2分に1人の割合で子どの命が失われていますが、一方、過去15年間におけるマラリア対策は公衆保健の歴史上これまでにない大きな成果をあげています。国連の推定によると620万人以上の命が救われ、マラリアで命を落とす子どもの数は50%以上削減しました。今まさに、一度は不可能だと思われた、マラリアをこの世の中から無くすことを達成するチャンスが訪れたのです。

マラリアとUHC

ゼロマラリアを達成するためには、マラリアの予防・診断・治療を含む、質が確保された保健サービスに全ての人々がアクセスできるようにするための政策が整っていなければなりません。また、発熱があったときにすぐにマラリア診断にアクセスできるか否かは生死にかかわります。そのためには、保健システムの強化とともに誰一人取り残さないマラリア対策が必要です。同時に、予防や複数のセクターにまたがるアプローチ、イノベーションなど、これまでのマラリア対策の教訓をUHC達成に活かすことも重要です。

マラリアとSDGs

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持続可能な開発目標(SDGs)の目標3には、2030年までにマラリアの流行を無くすことが掲げられていますが、マラリアという病気による付加を軽減し、マラリアを排除すことはSDGsに掲げられているほとんどの目標に関連しています。マラリアは開発が遅れている原因であり、同時にその結果でもあります。また、ゼロマラリアを達成するためには国境・セクターを超えたパートナーが一緒になって不平等の課題に取り組むことが肝要で、これはまさにSDGsが目指していることでもあります。

資料リンク

マラリアと、世界のゼロマラリアの取り組見に関する文献や資料を紹介します。